企業変革は、常に大きな期待とともに語られる。
経営層はAIを標榜し、CIOはSAP S/4HANAへの移行を推進する。財務部門はコスト最適化を重視し、クラウド業者はインセンティブを提示し、SIerは独自の方法論を語る。
しかし、それぞれが前に進んでいるように見えて、実際に彼らが同じ方向を向いているとは限らない。
分断されたまま進む変革の議論
多くのモダナイゼーション施策が難航する理由は、テクノロジーそのものではない。
問題は、「議論が分断されていること」にある。
戦略は戦略、実行は実行で別々に議論され、ガバナンスが整う前に移行計画が走り出す。クラウドコストはビジネス優先度と切り離されて検討され、AIは十分に整っていない基盤の上に後付けされていく。
こうしたズレは、気づかないうちに積み重なっていく。
分断が招くよくある失敗パターン
予想される通り、このように進められたプロジェクトは方向性を見失い、スコープは膨張し、スケジュールは圧迫され、さらに最悪の場合には現場と経営の信頼関係も揺らいでいく危険性をはらむ。
アジア太平洋地域特有の複雑さとSAP環境の難しさ
特にアジア太平洋地域では、その難易度はさらに高い。
複数の法人、異なる規制法、言語の違い。こうした環境の中で、SAPは長年にわたり業務に深く組み込まれ、各地域の要件に合わせて最適化されてきた。
いざ変革に着手すると、こうした複雑な依存関係が一気に表面化する。
ここで多くの企業が気づく。変革は、単なる移行プロジェクトではないと。つまり、全体を俯瞰して初めて成し遂げられる「オーケストレーション(統合的な設計と調整)」であるということに。
なぜ「オーケストレーション」が必要なのか
ECCからSAP S/4HANAへの移行が単なるシステム刷新ではないのと同様に、カーブアウトは単なる分離ではないし、選択的データ移行もスピードだけの話ではない。
すべての意思決定が、他の領域に影響を与える。
データ設計はレポーティングの在り方を左右し、レポーティングはコンプライアンスを定義する。さらにコンプライアンス変更の影響は業務モデルへと波及する。クラウドの選択はコスト構造を左右し、AIの活用可否はデータ品質に依存するところが大きい。
これらがバラバラに進められると、リスクは静かに、しかし確実に蓄積されていってしまう。
成功の鍵は「整合性(アラインメント)」
だからこそ、成功に終わる変革はツール選定からではなく、「整合性」から始まるのだ。
何を最初に守るべきか。何は後から変えられるか。パートナー間でどう連携するか。ビジネス部隊とテクノロジー部隊はどう足並みを揃えられるのか。
この共通認識こそが、変革の土台といえる。
ONE.Ascentという考え方
こうした課題に対するアプローチが、ONE.Ascentである。変革を個別の施策としてではなく、戦略・ERP・クラウド・データ・ガバナンスを横断した一貫したジャーニーとして捉える。
目的は、やみくもにスピードを上げることではない。変革のプロセスにおける不確実性を減らし、より確実に前進することである。
今後は、さまざまな切り口からこのテーマを掘り下げていく。M&Aに伴うカーブアウト、AIを前提としたデジタルコア変革、コア領域の標準化、クラウドコスト最適化、財務変革など。
テーマは異なっても、共通するポイントは一つだ。重要なのは「何をやるか」ではなく、「どの順番で進めるか」である。
企業変革の流れが止まることはない今、それを「分断」して進めることだけは避けるべきだ。
確信を持って前に進む企業は、変革を単なるIT施策の集合としてではなく、経営としての意思決定として捉えている。
次のステップ
SAP変革、SAP S/4HANA移行、選択的データ移行、クラウド戦略の見直しに取り組んでいる企業に、ONE.Ascentの取り組みをぜひ確認していただきたい。
ウェビナーやキャンペーンページを通じて、アジア太平洋地域のほかの企業がどのように変革を「統合的に」進めているのかを紹介している。